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2016-11-12 の記事 - 2016-11-12
米大統領選はトランプ氏の勝利となりました。半分覚悟はしていましたが、絶望的です。
日本も異常な状態となっている中、米国にまでミニ安倍(*)が誕生してしまったことには頭を抱えざるを得ません。

(*)日本のレイシズムの異常さを知らない人、というよりここまで目立つ形でレイシズムが横行している以上、見ないふりを決め込んでいる人と呼ぶのが適切でしょうが、そうした人にとってはピンと来ないかもしれませんが、日本のレイシズムは米国などの主要国と比較して途方もないほど先を行っています。
日本はもう何年も前から、歴史修正主義者の集団が政権を担い、差別デマサイトである保守速報をシェアするような者が首相であり、在特会と懇ろの連中が平然と内閣に入り、異常な差別的言動を繰り返した石原氏、在特会と懇ろの小池氏といったレイシストが東京都知事となるような国なのです。
アメリカの大統領が周囲をKKKと懇意の者で固めれば大問題になるでしょうし、ドイツの首相がネオナチ系デマサイトをシェアするほどのネオナチであり、与党がナチスの悪行を捏造であると触れ回るならやはり大問題になることは言うまでもありませんが、日本ではこれら全部と同じことが平然と行われているわけです。
おそらく、トランプ氏がこれから仮に30年ほど大統領をやり続け、ヘイト政策を次から次に実行に移したとしても、レイシズムにおいて日本に追いつくことはできないでしょう。

私は政策面において、トランプ氏について一定の悲観はしているものの、極端なまでの悲観はしていません。非現実的な政策を実行に移すことは不可能または非常に困難であり、ある程度は現実路線での対応を余儀なくされるであろうと予想できるためです。
無論、それが「現実路線の範囲内における最悪の悪夢」となるのか、それとも「想像もつかないほど融和的で穏健な対応」となるのかは、実際の政権運営を見てみないことには分かりませんが。
ただし、今回のトランプ氏の最大の「罪」は、実は政策ではありません。仮に氏の過激な発言は単なるポーズであり、実際には大統領として十分的確な人物であったとしても、それは全く変わることはありません。

この大統領選において最悪であったのは、実に投票者の半分もの人がトランプ氏の差別的言動を肯定しているか、少なくとも否定するつもりがないことを示したという点にあります。
日本のマスコミは「米国が分断された」などと言ったりしていますが、現実にはその程度の甘っちょろいものでありません。これは要するに、人種や宗教などのマイノリティに対し、隣人たちが自分を迫害し平然と踏みにじるような思想を持っているのかもしれない、いや、おそらく持っているのだ、と示す結果に他ならず、これはマイノリティにとって身の安全を脅かされかねない、極めて現実的な危機なのです。
現に、トランプ氏勝利が明らかになった前後の米国では、黒人やヒスパニックなどの人種的マイノリティ、メキシコ人とみなされた人、同性愛者、トランスジェンダーなどに対するヘイトクライムが複数件発生しています。
なお、選挙結果確定後にはトランプ反対デモが発生していますが、あれも単に選挙結果を受け入れたくないがためのデモとして片づけるべきではありません。マイノリティにとっては実際に命や身体への危機であり、単に「選挙結果が嫌だ」で済むようなものではないのです。

レイシズム先進国である日本でも、同様のことはたびたび発生しています。
人種差別的言動を全くはばかることのない石原氏、在特会と懇ろの小池氏などは多くの票を集めて東京都知事となり、人種差別と歴史修正主義にまみれたヘイト内閣は直近の選挙にて大勝を成し遂げました。沖縄では機動隊が「土人」「シナ人」とレイシズムを叫び、政治家の一部もそれに賛同する始末です。
「朝鮮人を殺せ」と街中で叫び立てるなど人種差別を扇動してきた在特会元会長・高田誠は、東京都知事選において落選こそしたものの、決して無視できるものではないほどの票を獲得しました。在特会自体も一定の支持を集めており、多くの者がその主張に賛同しています。
相模原障碍者大量殺戮事件は近代日本史上でも津山に次ぐほどの大量殺戮であり、障碍者を標的とした明確なヘイトクライムですが、このような最悪な殺戮犯に対してすら、賛同・共感する者も少なくはありません。透析患者に対する虐殺の扇動にしても同様です。
すなわち、これらは人種・民族・宗教・性的立場・障碍・疾患などにおけるマイノリティにとって、「○○(自分の属性)を殺せ」と叫ぶような連中に共感する者、あるいは実際に○○を大量虐殺した犯人に賛意を示すような者、何かのきっかけがあれば自分を殺しに来るかもしれないような者が、自らの隣人であるということを示すものなのです。
これがどれほどの恐怖であるか、またこれが単なる取り越し苦労ではなく、実際に身の危険に直結するものであることについては、いちいち説明するまでもないでしょう。
米国ではトランプ氏に公然と反対する有名人も多く、当選に対してはデモが発生しましたが、私たち日本人はこうしたマイノリティの現実的な恐怖に対してあまりにも無頓着すぎました。結果、何年も前から彼らの生存権を脅かし続け、朝鮮学校襲撃事件や教職員組合襲撃事件、相模原障碍者殺戮などの凶悪なヘイトクライムを防ぐことができませんでした。このまま見て見ぬふりを続け、彼らの隣人として彼らへの迫害に手を貸し続けるのであれば、今後ともマイノリティの生存権はますます脅かされるでしょうし、いずれ関東大震災虐殺のような大規模虐殺の再来を招くことになるでしょう。

これがまさにトランプ氏の罪であり、また現在進行形でこの日本社会でも起こっていることなのです。人種差別を平然と行う者が現れ、それに触発されて多くの者が賛同を表明し、レイシズムが「当たり前」のものとなっていく。これはまさに、ヘイトスピーチ、差別扇動表現そのものです。

次に、トランプ氏が日本社会に与える影響について。
氏は日本について、防衛してほしければもっと金を払うべきとの主張をしていますし、核武装にも言及しています。となればほぼ間違いなく、日本国内では「憲法を変えて軍備増強すべき」「核武装すべき」といった論が出てくることになるでしょう。
金を余分に払うのが嫌だから軍備を整えよう、などとプラモデルの戦車でも買うように簡単に言ってくれるものですが、「そんなことをすれば余計金がかかるから本末転倒」と正論を言っても無駄です。こうしたことを主張する連中は、単にトランプ氏を口実として利用しているだけであって、氏の当選による日本への影響などといったことを考える気は最初からないのです。
なお、米国依存から脱却の上で強力な防衛力を整え、中国に対抗するために軍拡するなどというなら、少なくとも出口戦略くらいは明確に示されねば話になりません。通常、軍拡や戦争といったものは開始するのは簡単でも、終了するのは難しいものです。そして現在、国力も経済力も日本より中国の方が上であり、競争し続ければ必ず日本はついていけなくなります。後に残るのは、軍備費の増大によって荒廃した国家経済と、巨大化した周辺国の軍備、そして互いの国に対する強烈な憎悪感情、軍事力で大きく劣った中での一触即発の状況だけです。これはまさに最悪の事態と言えるでしょう。無論、かつての関東軍のような輩が現れたり、安倍氏のような差別主義者が自身の憎悪感情を優先させれば、実際に肥大化した軍事力同士が衝突して戦争となることもあり得ます。
何の考えもなく軍拡競争をはじめ、破綻するまでやめないというのなら、単なる亡国の策ですから論外です。途中でやめる方策があるというのなら、それが確実に成功することについて確信が持てなければなりませんし、軍拡をやって途中でやめる方が最初からそれをしない場合より明確に得をすることも示されなければなりません。
核武装に至っては、米国としては実際に使用することもできないお邪魔虫兵器などよそに追いやりたいのは当然でしょうし、核は実際には「こちらには核があるぞと言い張り、他国が理性をもって攻撃してこないでくれることに信頼し期待する」兵器です。現に冷戦期、各地で戦争が止むことはありませんでしたし、そのわずか数十年のうちに核戦争の危機を複数回起こしています。それほど相手のことを強く信頼できるなら、金銭や外交的立場をドブに捨て、核戦争のリスクを背負う方法によって、人命と国土を全部賭けてまで相手を信頼するより、もっと安全で安価な方法で関係を築こうとしてはいかがでしょうか。
なお、「米国が日本をあまり助けようとしなくなるかもしれない」ということについては、同意する以外にありません。ただし、トランプ氏とは無関係に。
日本の現政権がやっていることは、要するに米国の威を借りて周辺国の神経を逆なでし、都合が悪くなれば米国を持ち出して閉口させたり、金をバラまいて黙らせることです。このバラまきがろくな成果も挙げられていないことは、インドネシア高速鉄道やAIIB参加国などを見れば分かりますし、それ以前の問題として歴史修正主義的なことを一切しなければ、周辺国の神経を逆なですることを減らせ、しかもコストは全くかかりません。
米国は日本のこうした行動の尻拭いをせねばならないのであり、最悪の場合は自国の若者の命を代償とすることになるかもしれません。トランプ氏だろうがその他の大統領だろうが、こんなことは誰でも御免なのは当たり前でしょう。
となると、日本が取るべきであった、そして今からでも取るべきである手はひとつしかありません。軍拡競争などという荒唐無稽な夢は捨て、歴史修正主義を誇示するのをやめ、相手をバカにしてから金で黙らせるのをやめ、周辺国との友好に努めることです。今まで米国の威を借りることでそれを怠るばかりか、マイナスにしてきた分を回収するわけですから、その道は決して平坦ではありませんが、実質的にそれ以外に取れる手段は存在しません。
融和は非現実的思想なのではなく、実は最もしたたかで安上がり、費用が少なく利益が大きい外交手段です。ですから世界各国、領土などで争いがある場合でも、無駄な敵対よりも融和に努めようとするのです。このところ何かと話題のフィリピンなどですら、ただ過激なばかりでないことを見れば分かるでしょう。それに大げさな話でもなく、ただ単に歴史修正をやめるだけでもずっとマシになります。今すぐ仲良くするのが無理というなら、靖国参拝や大日本帝国に問題はなかった論をやめ、他国への包囲網を作るだの歴史戦に勝つだの、できもしないことをいちいち息巻いて喧伝するのをやめ、何の得もないのにわざわざケンカを売るのだけでもやめればよいのです。
「米国の威を借りて他国の神経を逆なでし続け、とうとう米国があきれて助けてくれなくなったら窮地に陥る」、こんなものは当たり前です。このような状況にならないための答えもまた、明らかなのです。
トランプ氏当選を唯一良いことのきっかけにできるとしたら、これしかないでしょう。ただ、現実には人種差別主義者連中がその憎悪感情に基づき、悪い方向に変えてしまう展望しか見えないのがつらいところです。

なお、日本のTPPの動きに関してはあきれ果てています。私自身は「加入しないことができないならば、仕方がないから有利な条件を飲ませろ」として消極的賛成としてきましたが、大統領候補が両者ともに(クリントン氏はポーズの可能性もあるにせよ)反対を公然と表明したならもはや急ぐ必要はありませんし、おまけに大反対派であるトランプ氏が当選したとなれば、そこに乗っかるのは当然とすらいえます。
家を取り壊す日に家の修理に来てもらうようだというか、水筒の中身が空なのを確認してから遠足に持っていくようだというか、もうコントにしか見えないほどに滑稽すぎます。